「台湾の飲食業で働くといくら稼げるのか?」
ニュースでは王品集団の店長が年収200万元超、鼎泰豐は業界トップの待遇——といった高給な数字が並びます。一方で、台湾の飲食業界は長年「低賃金・重労働」の代名詞でもあり、2024年時点で約20万人の人手不足を抱える業界でもあります。
本記事では、主要上場チェーン(王品、瓦城、八方雲集、三商餐飲ほか)の2026年最新の年収・ボーナス事情と、ニュースには載らない「給与構造のカラクリ」を、公開データに基づいて解説します。
【2026年最新版】台湾飲食業界の給与水準の全体像
台湾の飲食業界は兆元産業——だが平均給与は全産業より低い
まずはマクロデータから見ていきましょう。
- 2024年飲食業営業額:1兆378億元(年増3.6%、過去最高/主計總處データ)
- 2022年:1兆279億元で初の兆元突破、2024年も継続成長
- 飲料店業(タピオカ・コーヒー等)も1,048億元規模に到達——「レストラン業」に次ぐ第2の千億元業態
コロナ後の外食リバウンドに加え、外国人観光客の増加、桃園市・竹科生活圏の人口移入などが追い風となり、業界全体が成長トレンドにあります。
しかし、それだけに人手不足も深刻です。
飲食業と全産業の平均月給の推移(2022-2024年)

104人力銀行のデータによると、2024年の飲食業の平均月給は39,788元(年収換算で約557,032元=約262万円)。これは全産業平均の46,617元(年収換算約652,638元=約307万円)より月あたり約6,829元(年間で約82,000元/約38万円)も低い水準です。
業界全体の営業額は兆元を突破しても、そこで働く人の賃金は全産業平均を大きく下回る——これが台湾飲食業界の基本構造です。
2026年最低賃金(月額29,500元)が飲食業に与えるインパクト
2026年1月1日から、台湾の最低賃金が月額28,590元→29,500元(+3.18%)、時給190元→196元に引き上げられました。
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最低賃金は2016年から10年連続の上昇で、総上げ幅は月給47.4%・時給63.3%でした。
この影響を最もダイレクトに受けるのが飲食業界です。八方雲集の正社員月給は28,500〜45,000元、アルバイト時給は190元起(2025年時点)と、最低ラインが法定最低賃金そのものと同じことが多く、最低賃金の改定が業界の賃金全体を底上げする構造になっています。
なぜ「二極化」が進んでいるのか
現在、台湾の飲食業界は明確に二極化しています。
トップ層(上場大手・鼎泰豐クラス):ブランド力・高単価・スケールメリットで人件費を吸収可能。王品グループや鼎泰豐は毎年調薪を実施し、鼎泰豐は営収の半分を人件費に投入する方針を公表。店長クラスは年収200万元超えも。
ボリュームゾーン(中堅チェーン・個人経営):食材コスト高騰と人手不足のダブルパンチ。業界経営困境調査では「食材原価の変動率」65.6%、「人手不足」61.5%、「離職率の高さ」55.6%、「人件費の高騰」51.1%と、コストと人手の問題が上位を占めます。
以降では、上場チェーンの具体的な給与水準を見ていきます。
主要上場チェーンの年収・ボーナス一覧
以下は、台湾証券取引所の公開データや各社発表、比薪水(salary.tw)の独自調査に基づく、非管理職(一般社員)の待遇目安です。
| 企業名(株式コード) | 業態 | 正社員年収目安 | 2024年ボーナス(年終獎金) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 王品集團(2727) | 多業態・ステーキ・鍋物など | 35,800〜38,200元 | 1ヶ月+毎月成果ボーナス | 業界最大手、年収100万元超の店長多数 |
| 鼎泰豐(非上場) | 小籠包専門 | 50,000元(無経験) | 平均60,182元 | 業界トップクラス、4年連続賃上げ |
| 瓦城泰統(2729) | タイ料理・中華 | 28,000元〜(兼職) | 1ヶ月+月・成果ボーナス | 幹部給与100万元前後 |
| 八方雲集(2753) | 餃子チェーン | 28,500〜45,000元 | 1ヶ月+各種ボーナス | 店舗数めちゃくちゃあるが平均年収低め? |
| 三商餐飲(2025年上場) | 牛肉麵・披薩・とんかつ | 約28,000元 | 32,286元(比薪水2023) | 業界平均以下、2025年調薪2-3% |
| 王座餐飲 | 日式レストラン複合 | — | 最高6ヶ月 | 銀座杏子、京都勝牛など日本ブランド |
| 六角國際(2732) | 飲料系 | — | 最高6ヶ月 | ドリンク上場企業 |
| 揚秦國際(2755) | 麥味登(マックみたいな)・炸雞大獅(揚げ物) | — | 2〜3ヶ月(税後純利20%連動) | 朝食・揚げ物 |
| 藏壽司(日系) | 回転寿司 | 51,000元(幹部候補店長) | — | 全台ジョブローテーション、2年で累計賃上げ9,000元 |
※日本円換算は1TWD=4.7円(2026年4月現在)。職種により大きく異なります。
ちなみに業界大手の王品集団(集團)の年収推移は以下のグラフになります。
飲食チェーン店の年終獎金ランキング
各社の平均年終獎金を比較すると、鼎泰豐が圧倒的トップであることが一目瞭然です。

鼎泰豐の平均年終獎金は60,182元で、2位以下の他社(約3万元前後)のほぼ2倍。比薪水独自調査では「連鎖餐飲業の年終冠軍」と評され、営収の約半分を人件費に投入する方針が背景にあります。
一方、王品・麥當勞・三商餐飲・爭鮮などは年終獎金3万元前後。月給の約1ヶ月分が業界の標準と言えます。
〈番外編〉非上場だが気になる「鼎泰豐」の給与事情
ニュースで「鼎泰豐は待遇がすごい」とよく聞きますが、具体的な数字は以下の通りです(2024年5月調薪後)。
- ホールスタッフ(外場服務人員):50,000元から
- 調理スタッフ(料理廚師):59,000元から
- レジ担当(櫃檯収銀員):40,000元から
- 4年連続賃上げ(2024年は6〜9%の調幅)
日本円換算で外場スタッフ起薪が約23.5万円/月(1元=4.7円)。これは日本の飲食チェーンのアルバイトや正社員初任給をも上回る水準であり、台湾飲食業界の中では例外的な高給です。
ただしDcard(台湾のSNS)などの口コミによれば、サービス基準が極めて厳格で、笑顔の質まで評価される「笑顔ボーナス微笑獎金)」など独特の評価制度があるとのこと。
「給与はいいが、それに見合う仕事量と緊張感」という声も多く、特殊な環境です。
ニュースには載らない「台湾飲食業界給与の3つの落とし穴」
「王品の店長年収200万元」「鼎泰豐ボーナス6万元」——こうしたニュース見出しだけを信じると現実とズレます。飲食業界特有の給与構造には、3つの落とし穴があります。
【半導体編】台湾企業の給料、年収・ボーナスはいくら?【2026年更新】
1.「平均年収」の罠——本社職と現場職で倍以上の差
上場企業が発表する「非管理職フルタイム従業員の給与中央値(非擔任主管職務之全時員工薪資中位數)」には、本社職(商品開発・マーケ・財務・IT)と現場職(店舗スタッフ)が合算されています。
本社職は月給5〜8万元、現場スタッフは月給3〜4万元というのが実態で、公開平均値より現場の手取りはかなり低いケースがほとんどです。
以下は王品グループの「等級別年収推移」を可視化したものです。

計時人員(時給210元)からスタートし、正社員→幹部候補→店長と階段を上がって、エース店長クラスで年収200万元超え(年薪24ヶ月分)に到達するのは全体で約20名のみ。
王品グループの台湾従業員数は2024年末時点で10,808人なので、200万元超えはわずか0.2%の狭き門です。ニュース見出しの「年収200万元」は、まさにピラミッドの頂点の話と言えます。
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2. 服務費(サービス料10%)は誰のもの?
台湾の中〜高級レストランでは「サービス料10%(中国語で一律加收一成服務費)」が慣例です。
法律上、サービス料は「商品価格の一部」として扱われ、企業が自由に分配できます。
実際には:
- 会社の売上として計上→法人税の対象
- 一部が店舗の営業獎金として分配
- 残りは本社の営運コスト・株主還元に
鼎泰豐のように「営収の半分を人件費に」と明言する企業は例外で、多くのチェーンではサービス料の大半が会社側に残ります。
「做六休一」とシフト制——時給換算すると最低賃金スレスレ
台湾の労基法は「7日に1日の休み(俗称:做六休一)」が原則ですが、飲食業は変形労働時間制の適用が認められており、実質的に週6勤務となる店舗も少なくありません。
例えば月給40,000元のスタッフの場合:
- 月の労働日数:26日前後
- 1日の労働時間:10〜11時間(開店準備・閉店後清掃含む)
- 月間実労働時間:約260〜286時間
- 時給換算:140〜154元
2026年の最低時給(196元)を下回る計算になります。
表面上の月給は悪くなくても、労働時間の長さを考えると「実質最低賃金スレスレ」という構造が、台湾の飲食業界で人手不足が続く大きな要因です。
職種別の給与レンジ
最後に、104人力銀行・1111人力銀行の公開データをベースに、職種別の給与レンジを整理します。
| 職種(中国語) | 日本語 | 月給レンジ | 年収目安 |
|---|---|---|---|
| 內場・廚助 | キッチン補助 | 28,000〜35,000元 | 350,000〜450,000元 |
| 外場服務員 | ホールスタッフ | 30,000〜40,000元 | 380,000〜520,000元 |
| 師傅・副主廚 | 副料理長 | 40,000〜55,000元 | 500,000〜750,000元 |
| 主廚 | 料理長 | 50,000〜70,000元 | 650,000〜1,000,000元 |
| 店長 | 店長 | 50,000〜80,000元 | 700,000〜1,200,000元 |
| 區經理 | エリアマネージャー | 70,000〜100,000元 | 1,000,000〜1,500,000元 |
| 本社職(商品開発・マーケ) | 本部職 | 50,000〜80,000元 | 700,000〜1,300,000元 |
※上場チェーン目安。個人経営店・中小チェーンはこれより低い水準。
最も人数が多いのはホールスタッフ・キッチン補助のゾーンで、ここが業界の「平均月給39,788元」を作っています。
店長クラスに上がれるのは通常5〜10年、主廚(料理長)クラスは調理専門の経験が7年以上必要というのが業界相場です。
まとめ
- 台湾飲食業界の市場規模は2024年で1兆378億元と兆元産業だが、平均月給は全産業より約7,000元低い水準にとどまる
- 鼎泰豐は例外的な高給(ホールスタッフ5万元から)。他のチェーンはボーナス3万元前後が標準
- 王品集団の年収200万元店長は約20名のみ。メディアが切り取る「エース事例」を業界平均と誤解しないこと
- 2026年1月から最低賃金が月額29,500元・時給196元に引き上げ。飲食業界は連動して底上げされるが、労働時間を考慮すると実質時給は依然として厳しい
- サービス料10%はスタッフの取り分ではなく、ほとんどが会社側に残る構造
主要情報源
- 主計總處「薪情平臺」「批發、零售及餐飲業經營實況調查」
- 経済部統計處「批發、零售及餐飲業營業額統計」
- 台湾証券取引所「公開資訊觀測站」非主管職務之全時員工薪資資訊
- 104人力銀行《民生消費產業人才白皮書》
- 比薪水(salary.tw)独自調査
- 商業週刊、経済日報、UDN報道
- 未來流通研究所「台灣餐飲全體次產業結構」
出典:https://blog.salary.tw/article/2023-catering-year-end-bonus 出典:https://money.udn.com/money/story/10871/9241759 出典:https://blog.104.com.tw/2023-catering-jobs/

