台湾の「国花」をご存じですか?
私は知りませんでした…
「南国だからマンゴー? それとも有名な胡蝶蘭?」
正解は、「梅(ウメ)」。
沖縄よりも南に位置し、常夏のイメージが強い(本当にイメージですが..)台湾で、なぜあえて「冬の花」である梅が国のシンボルなのか。
実は、この「梅」という選択には、単なる植物としての好みを超えた、台湾という国の「歴史」が深く関係しています。そしてその意味は、オリンピックで使われるあの「白い旗」にも色濃く反映されていました。
この記事では、台湾の国花が「梅」である意外な理由と、国際大会で使われる「梅花旗」に隠された意味を解説します。
【結論】台湾の国花は「梅(ウメ)」
台湾の国花は「梅」です。
なんか意外ですよね。正直な話、私が初めて台湾に興味を持った頃も、「えっ、マンゴーとかラン(蘭)じゃなくて?」と勝手に南国の花を想像していましたから。
台湾で「冬の花」が選ばれた理由

「台湾=常夏の島」というイメージが強いので、ハイビスカスやブーゲンビリアのような華やかな熱帯の花を想像するのは当然です。
ちなみに台湾は常夏の島じゃないですし、北の方は東京と同じくらい寒いです。冬の渡航は気をつけてください。
台湾の人々が国花として選んだ「梅」には明確な理由があります。
それは、「寒さが厳しければ厳しいほど、美しく香り高い花を咲かせる」という梅の特性が、台湾の人々が重んじる「忍耐」や「不屈の精神」と重なるからです。
困難な状況でも希望を失わず、じっと耐えて花開く。そんな国民性を象徴するのに、梅ほどふさわしい花はなかった、ということです。
実際に、1964年7月21日に正式に国花として制定されましたが、それ以前から長い間、台湾(中華民国)のシンボルとして愛され続けてきました。
なぜオリンピックで国旗を使えない?「梅花旗」の謎
ただ、なぜ、オリンピックやWBCなどの国際大会で、国旗(青天白日満地紅旗)ではなく「梅の旗」が使われるのか?
みなさんの予想通り、デリケートな政治問題が絡んでいるからなんです。
「チャイニーズタイペイ」という呼び名の背景
台湾代表が国際大会で「台湾(Taiwan)」や「中華民国(Republic of China)」という名前ではなく、「チャイニーズタイペイ(Chinese Taipei)」と呼ばれていることはご存知でしょうか?
これには、1970年代の複雑な国際情勢が関係しています。
当時、国連における中国の代表権が中華人民共和国(中国)に移り、台湾(中華民国)の立場が非常に難しくなりました。その結果、オリンピック委員会(IOC)などの国際組織でも、「中華民国」としての参加が認められなくなってしまったのです。
そこで、「名前も国旗も使えないなら参加しない!」という時期を経て、1981年にIOCと結んだ協定(ローザンヌ合意)により、以下の条件で復帰することが決まりました。
- 名称: チャイニーズタイペイ(中華台北)
- 旗: 国旗ではなく、委員会旗(梅花旗)を使用
- 歌: 国歌ではなく、国旗歌を使用
つまり、あの梅の旗は、「台湾選手が国際舞台に立つための苦肉の策であり、知恵の結晶」とも言えるんです。
「国旗が振れないのは悔しい」という思いと、「それでも世界で戦いたい」というプライド。その両方が詰まっているんです。
五輪旗のデザイン、国章と梅の組み合わせ
では、あの「梅花旗(ばいかき)」には
白い旗の中央に、赤いラインで描かれた「梅の花(5つの花弁)」があります。
これは以下の3つの意味からできています。
- 青天白日(せいてんはくじつ):上部の青い円と白い太陽。これは台湾の国章(および国民党の党章)そのものです。「国旗はダメだけど、シンボルは入れたい」という強い意志を感じます。
- 五輪マーク:下部にある5色の輪。これはオリンピック委員会の証です。
- 赤・白・青のトリコロール:梅の枠線(赤)、中の背景(白)、国章(青)。この配色は、実は台湾の国旗(青天白日満地紅旗)と同じ色使いになっています。
一見するとただの「梅のデザイン」ですが、実は「形を変えてでも、我々は台湾(中華民国)である」という意味が込められているんです。

ただの花じゃない!梅のデザインに隠された「三蕾五辦(弁)」
国花である「梅」のデザインには、単なる美しさだけでなく、国の成り立ちに関わる重要な数字が隠されているんです。
それが、「三蕾五弁(さんらいごべん)」という言葉です。
「三蕾」は三民主義、「五弁」は五権憲法
台湾の公式な梅の図案や、チャイナエアラインの航空機の尾翼などをよーく見てください。
梅の花は「5枚の花弁」で描かれ、その中心には「3つのしべ(蕾)」があるのが正式なデザインです。
- 三蕾(3つの蕾):これは、孫文が唱えた「三民主義(民族・民権・民生)」を象徴しています。
- 五辦(5枚の花弁):こちらは、「五権憲法(行政・立法・司法・考試・監察)」を表しています。
日本などは「三権分立」ですが、台湾はこれに2つ加えた「五権分立」なんです。
つまり、梅の花一つひとつが、「この国は三民主義と五権憲法によって成り立っている」という意味があるんです。
花言葉うんぬん以前に、めちゃくちゃ政治的な意味が込められている……。これが、台湾の国花が「梅」である重みなんです。
100元札やエアラインにも!生活に溶け込む梅モチーフ
台湾旅行に行ったら、お財布の中を見てみてください。
100元札や50元硬貨の裏側には、しっかりと梅の花が描かれています。
また、台湾のフラッグ・キャリア(エバーじゃないよ)である「チャイナエアライン(中華航空)」の尾翼に描かれているのも、ピンク色の美しい梅の花(「紅梅揚姿」という愛称があります)。
政治的な意味合いはどうあれ、台湾の人々にとって梅は、「自分たちのアイデンティティそのもの」として、生活の至る所に溶け込んでいるんです。

よくある勘違い?「蘭」や「牡丹」との関係
ここまで読んで、「あれ? でも台湾って『蘭(ラン)』も有名じゃなかったっけ?」と思った方。
その感覚、鋭いです。そして正解です。
実は、台湾の国花を「蘭」だと勘違いしている人は非常に多いんです。
ただ、誤解されてしまうくらいに台湾の蘭人気がありました。
蘭も有名だけど…国花ではない
確かに、台湾は世界有数の「蘭(胡蝶蘭など)」の産地です。
2023年の台湾の*蘭の輸出額は1億9,760万米ドルに達していて、2021年の統計では、台湾の花卉輸出総額2億2,415万米ドルのうち、蘭が92.53%(2億740万米ドル)を占めているそうです。
そして、輸出蘭のうち、胡蝶蘭(ファレノプシス)が圧倒的なシェアを占めており、2021年には花卉輸出総額の71.45%(1億6,015万米ドル)に相当しているそう。
だから、「蘭」が国花と思う方がたくさんいるのかもしれません。
それくらい高品質で有名な花なんです。
*Blooming Around the World: Taiwan’s Moth Orchids
また、台南市で開催される「国際蘭展」は世界中からバイヤーが集まる一大イベントですし、日本で売られている胡蝶蘭の多くも台湾産苗が使われています。
ちなみに、「牡丹(ボタン)」をイメージする方もいますが、これは歴史的に中国大陸(清の時代など)で好まれた花であり、現在の台湾の国花ではありません。
台湾政府がというサイトに面白いランの記事があったので合わせて見てみてください。綺麗なランの写真が沢山見れます。
まとめ:梅を知れば、台湾の「強さ」が見えてくる
今回の記事では、「台湾の国花=梅」ということ、台湾のオリンピック旗(梅花旗)の意味を解説しました。
台湾に長く住んでいても気にしないと分からないこともまだたくさんあるんだなと思い、まとめて記事にしてみました。
気になったら調べるってやはり大事ですね。
よくある質問(FAQ)
Q1:台湾の国花は何ですか?
A: 「梅(ウメ)」です。1964年に正式に制定されました。南国のイメージとは裏腹に、厳しい冬の寒さに耐えて咲く姿が、台湾の人々の「忍耐」や「不屈の精神」を象徴しているため選ばれました。
Q2:なぜ台湾はオリンピックで国旗を使えないのですか?
A: 1970年代以降の国際的な取り決め(「一つの中国」問題など)により、オリンピックなどの国際大会では「中華民国」としての国旗・国歌の使用が認められていないためです。その代わりとして、国花である梅をモチーフにした委員会旗(梅花旗)を使用しています。
Q3:台湾の国花はハイビスカスや蘭ではないのですか?
A: 違います。ハイビスカスや蘭も台湾でよく見られる人気の花ですが、国花ではありません。特に蘭は台湾の重要な輸出品(産業の花)として有名ですが、国の象徴(国花)としては梅が採用されています。



